八丈島~青ヶ島 最果ての秘境ツアー その8【人も歩けば岩に潰される】

9/23(水)青ヶ島 二日目

青ヶ島二日目の朝の天気は快晴。

朝一で集落⇔港を結ぶ外輪山の国道酷道236号線の崩落現場の見物に宿から車で出てみた。

崖までの地図

しかし、すぐに道が狭くなり、一車線となった上、ミキサー車などが行き来していたので、工事車両の往来の邪魔になるのを恐れ、道の広いところで車を止めて徒歩で崩落現場を目指す。

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道路から見る海の色と斜面の激しさが凄まじい。

銚子の犬吠崎に地球の丸さを体感できる展望台があるらしいが、ここではそこら中で地球の丸さなんぞ体感できるので、目新しさのカケラも無い。

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基本的に外輪山と海の間の斜面はどこもこんな感じの崖なので、港なんて物は江戸時代には無かったらしい。
崖に梯子をいくつも繋いで海まで垂らすか、辛うじて船をつけられる岩瀬から崖道をよじ登るしかなかったとか。

江戸時代に土佐の国の水夫、長平(野村長平)が天明5年(西暦1785年)に鳥島に漂着し、13年間のサバイバル生活の末、鳥島を脱出し、青ヶ島にたどり着いた時の記録が残されている。

そこには、奇しくも天明の別れと同じ年に鳥島に流れ着いた長平による13年後の復興を試みている最中の青ヶ島の姿が記録されていた。なお、この16年後に復興が一時断念され、青ヶ島は無人島となる。

以下はその記録である。

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島を出てから五日目の夕方、前方に島影を発見した。彼らの暮らした島(鳥島)よりも一回りは大きく見えた。一同力を得て、その島目指して舳先を向けて進んだ。

翌日四ッ刻(午前十時頃)に船は島の東岸の沖に到達出来たが、この島も同じように険阻な岩山であった。

上陸出来そうな場所を捜すうちに、崖に梯子が掛けられているのを発見した。三つの梯子を繋ぎ合わせたものだが、明らかに人間が住まいしている島に違いないと喜んだ。しかし浪が荒く船を岸に着けるのは難しかった。そこで船を北に向けると磯辺の岩場に、轆轤(ろくろ)が据え付けられているのが見えた。そこが船着場である事は間違いないのだが、やはり浪が荒くて近づけるのは難しかった。

そこでもう一度、東に戻って衆議を重ねて、清蔵と由蔵を泳いで島に揚がらせ、あの梯子を登らせてみようという事に決し、清蔵と由蔵は海に飛び込み抜き手を切って島の磯辺に揚がった。

かなり急な梯子であったが、二人が登って見ると、上の台地に九軒の部落があり三人の男がいた。清蔵が沖の船を指差して事情を説明し、漂流者であることを告げると、先程の轆轤のあった場所に船を回すように言われた。

残りの者たちが山に働きに出ているので、一人が知らせに走り、他の二人は清蔵と共に泳いで船まで来たが、継ぎ接ぎだらけの船と帆と、鳥の毛皮を纏った一同を見て唖然としていたが、儀三郎から漂流の顛末と十余年の間、無人島で暮らして来た経緯を聞き納得し、この島は八丈島の南にある青ヶ島だと教えた。

しかし、この島は度重なる噴火で一時は島民の一部が八丈島に避難し、残された者は再度の噴火で悲惨な最期を遂げたと言う。

その後、噴火が治まってから再び島を開拓する為に、現在は男たちだけが九人この島に来て、住まいし暮らしているのだと語った。

船を轆轤のある磯辺に回すと既に残りの男たちが、船を繋ぎ停める仕度をして待っていた。

船を轆轤で引き寄せて固定させると、艀(はしけ)船を伊勢丸に寄せて、年配の者から順に島に揚がった。

儀三郎を頭にして、先ずは日本の地からは離れてはいるが、日本人の暮らす島に辿り着いたことを神仏に感謝し、題目を唱え伏し拝んだ。あの松兵衛ですらきちんと正座して題目を唱えていた。

儀三郎は改めて今日の日付を問うてみた。

島民は寛政九年六月十三日だと教えてくれたが、日付を繰ってみると、自分たちが島を出帆したのは六月八日だった事を改めて知った。

島民たちの進言で、船に積んだ諸道具は一旦島に運び上げられた。そのまま、沖に係留しておくには心許無かったからだ。

漂流者たちが島民の暮らす台地に上がってみると、九人の島民は九軒の家に一人ずつ暮らしていたが、穀物は全く無く、食物は里芋と薩摩芋を食事にしていた。穀物が全く無いのは野鼠が夥しく繁殖し、食い荒らす為だと言う。水もほとんど無く、海岸近くの岩場から湧き出ている温水を汲み取って飲んでいた。儀三郎たちはまたここでも水に不自由するのかと暗澹たる気持ちになった。

儀三郎たちは取り敢えず九軒の家に分散して島民の世話になる事になった。

島民は、まだ芋の収穫時期ではないのでと、古芋や芋の茎を干したもの、あした葉、つわぶきなどを分け与えてくれた。また煙草も貰い久方ぶりに吸った。島にいる間は大黄に似た葉を乾燥させて刻み、煙草代わりにしていたから、煙草好きな松兵衛や薩摩船の重次郎は喜んだ。松兵衛は忠八も煙草好きだったから、骨箱の中に入れてやろうと言った。

何かと忠八を疎んでいた松兵衛の言葉に、由蔵はほっとする優しさを感じて三之助にその事を打ち明けた。

由蔵も既に二十五歳になっていた。人に対する優しさも判る年頃になっていたのだ。

儀三郎たちは持参した鳥の干し肉に、つわぶき(フキの一種)を混ぜて煮て食べた。どうやら人心地を得たものの、島民からこの島には漁労の艀(はしけ)船しか無く、三年もの間、八丈島との連絡は途絶えていると聞かされた。

儀三郎と栄右衛門は自分たちの船に便乗して、八丈島に連れて行ってくれと懇願した。便船を持たない島民たちも困り果てていたので、吉三郎と七三郎の二人が水先になって、青ヶ島に上陸してから二十五日目の七月八日朝五ッ刻(午前八時頃)、伊勢丸は久しぶりに帆を揚げた。

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はしけ2

はしけ(艀)というのは↑のような平底の川や河口、港の荷の積み下ろしや釣りに使う船の事を指すが、恐らくここでのはしけは帆のない小型和船の事を指すのだと思う。

ハシゴを3本つなげて・・・って辺りが凄すぎるが・・・崖の写真を見ていると納得してしまうなぁ・・・(;´Д`)

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この絶海の孤島での漂流サバイバル&脱出記録は吉村昭氏の「漂流」に詳しいので興味がある方は読んでみるのがいいのでは。自分も昔読んだが、これはかなり面白かった。苛酷な環境に閉じ込められた人間が知恵と創意工夫で生き抜き、決して故郷への帰還を諦めずに耐え抜いてついに脱出を果たすという話であり、半分以上フィクションのロビンソン・クルーソーなんぞより余程面白い。

同じ目には決して遭いたくないが・・・(-_-;)
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こうして車を降りてからテクテク港に向かって歩いていくが、道中目に入る崖の角度が45度以下の地点が殆ど無い・・・本当に険しい切り立った地形が延々と続く。

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道中にコンクリで固めた崖に小さな穴が開いていてその中に小さな社が祀られていた。道が崩落しないようにと神にでも祈りたくなるという島民の願いが込められているようだ。

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そこら中が左右にうねった切り通しで、いつ崩落するか分った物ではない恐怖感がひしひしと感じられる。



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道路から外輪山方面を見上げると本当に垂直の断崖絶壁にしか見えない。コンクリで強引に固めてはいるが、そこら中で風化しているのと強化工事がやりきれていない箇所で山頂方面からの落石が道路に頻繁に起きているらしく、道路の側溝の金属の蓋が岩でグチャグチャにひしゃげた跡や1m以上ある岩の塊が側溝を潰している箇所が点在していた

つまり生身の人間がこの道を歩いていると・・・

落石

↑のような「落石の計」を生身で体験できる可能性が十分あるという事だ。

この島なら本当に水滸伝テーマパークか三国志テーマパーク(蜀編)とかやれるんじゃね?

怖いので慎重に上を伺いつつ崖からなるべく距離を取って道の海側を歩いていく

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20分ほど激しいアップダウンを歩いて工事現場に到着。

国道の修復工事なのに工事の発注は東京都なのがちょっと意外。

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おー何か派手に地すべりを起こしているのが見えるなーと思いつつ写真を撮っていたら、作業員の方が不審者を見るような目でこちらを見ていたので近づくのをやめて引き返す。

まぁ朝っぱらからこんな所に徒歩で出向いて写真を撮っているアホは不審者であるに違いあるまいが。

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後で港から撮影した崖崩れの現場であるが、見事に斜面が崩落して道が潰されている事が良く分かる。

これでは内輪山から青宝トンネル→青翔橋を通るルートを島民が切望していた事もこれで良く分かった。

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とりあえず宿に朝食をとりに帰ろうと、またテクテク道を引き返して歩いて行ったら、途中でレンタカー屋の親父さんが工事現場の重機の給油用か、軽トラにガソリン(軽油?)タンクを積んで前から走ってきて自分の横で停車して

「おー生きていたかー」

「へ?」

「いやー途中で車が乗り捨てられていたから、磯釣りをしにそこらの崖を降りて死んだんじゃないかと思って心配しちゃったよー

「そんな無謀な真似はしません!(#゚Д゚) 」

というかそういう事をやらかして大怪我や死ぬおバカさんがいるのだろうか・・・こんなグズグズ土壌の急勾配の崖なんぞ、ザイルでも無ければ絶対降りる気はしないと思うのだが・・・つかこんな崖、素手で登れるかよ。

さて、島民の皆さんには私は不審人物として顔が割れたようだから、開き直って更にディープスポットの見物に行く事にする。あと釣りなんかもうどうでもいいけど一応やっておくか。

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