八丈島~青ヶ島 最果ての秘境ツアー その4【税っ海の孤島】

さて、突っ込みどころ満載な教育施設を見物した後、更に坂道を登って高台の一体をウォッチングしてみる事にする。

東京などでは、高台=見晴らしの良いいい土地という扱いであるのだが、この島では逆に「港から遠く、風雨に悩まされる場所」という扱いなのか、集落は専ら海岸線近くに作られており、高台には水道設備と電波塔と墓しかない。

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現役の墓石には、他では見られないような極彩色の南方の花(見たところハイビスカスや朝顔のようなヒラヒラ極彩色系が中心)が供えられており、本土の墓のような湿っぽさとは無縁の雰囲気である。また、ちょっと外れに行くと今では供養する者もいない朽ち果てた墓が並んでいるのも特徴である。

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個人的には今回の旅のベストショット。

看取る者もいなくなり、朽ち果てた墓の向こうにある朽ちた木と、間に咲く彼岸花と、どこまでも蒼い海と、空の組み合わせがこの島の過去と今を語っている。

多分この風景は、数百年前から何一つ変わっていないのだろう。

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更に島の上の方には何やら大掛かりな施設があるようだったので、そのまま登ってみる。

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あったのは島の簡易水道設備。

雨水を溜め込んで浄化して各住宅に水を供給するのを目的とした設備である。

簡易と言いつつも、ヘリの上空からも集水のためにコンクリートで固められ、特殊ペンキで緑色に塗装された島の斜面が異様な光沢を放っていたのははっきりと確認できた。

実際に設備に近づいてみると、その巨大さに、ただただ唖然とするしかない。

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斜面に作られた巨大なウォータースライダーで雨水を集めて貯めていると言えば、分かるだろうか?

なお、この設備の頂上にはNTTの携帯電話用とおぼしき中継局があった。

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頂上から見るとこんな感じ、雨の日に滑り落ちるとさぞや爽快だろうが、やったら間違えなく下にある貯水タンク設備に激突して死ぬので、良い子の皆さんは決して変な気をおこしてはいけません。

簡単な鉄条網だけの簡素な仕切りに、子供が無謀なチャレンジをしないかどうか不安だ・・・

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次に、給水タンクの脇に尾山展望台 へ通じる脇道があったので、見物に行ってみる。

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ちょっと草道を歩いて行くと、その先には、とても金をかけて整備されたと思われる展望台施設や道が広がっており、あまりのバブル時代風設計に呆れて開いた口がふさがらない

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しかも良く見ると足元にライトが埋め込まれており、夜間は星を見る観光客向けに足元がライトアップされるという・・・

悪いが、この島にシルバーウィーク中に訪れた観光客は4人、いずれも一人旅の自分みたいな変人や離島マニアみたいな人か、火山の脇でキャンプをしていたバックパッカーであり、この設備を使うような人種は一人も居なかった事は間違いない

なお、この島の年間観光客数は200人程度。平均一日0.6人いるかどうかの島なので、4人も観光客が居たと言うのは、年間平均の6.5倍の集客密度であり、シルバーウィークに相応しい満員大御礼の数字であった事を付け加えておく。

また、後で述べるが、夜中にここまで辿り着くのは、かなり命がけの移動をこなす必要があり、物好き・命知らず・ダメ観光スポット好き、という三つの要素を満たして初めてここで星を眺める事ができるという大変難易度の高い観光スポットであり、自分には命知らずという要素が欠けているため、夜に来る事は無かった。

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この・・・ステンレスのポールのようなオブジェのバブル時代の東京都庁的なデザインセンスと無駄設備の全開っぷりにも心底痺れまくりである。

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これらダメオブジェの本土での制作費と輸送費、建築費がいくら要したかは・・・・

考えちゃダメだ、これは芸術なんだ、感じるんだ。

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もう、ダメポ設備にはうんざりなので、展望台からは島を一望してみる。この島の特徴的な形が良く分かる。

島の外郭が険しい山で360度を囲まれ、内側に広い平地があり、中央に小さな火山がある。

実はこの地形が、他の伊豆諸島や離島とは異なる青ヶ島特有の気候条件や環境を生み出している。天明の大噴火後に、半世紀をかけ、命がけでこの地に島民が戻ろうとした理由もここにある。

八 丈島もそうであるが、伊豆諸島の火山島の生活においては、火山島特有の切り立った沿岸部の地形により、良港に恵まれない島が多く、外界との往来の難易度 が高いのに加え、川がなく水が乏しいので畑作しかできない。更に台風や冬の暴風が絶えない天候など、気候が激しく、嵐が来ると潮を含んだ激しい風雨に晒され、畑の作物がすぐダメになるという悩みがつきまと う。つまり天候不順=不作=漁にも出れない=外界からも孤立⇒飢饉という生活基盤の脆弱さを昔から抱えているわけである。

しかし、青ヶ島は外輪山によって周囲を囲まれているため、内輪山付近に畑を作れば、風雨、特に風と潮の被害を避けられるため、一年を通じて温暖な常春の気候の中で作物を安定して育てられる。しかも他島に比べ、カルデラ内部に広い平地がある上に、火山灰質の柔らかい土が耕作に向いているため、離島の農耕地としては非常に恵まれた条件を備えている。

実際に青ヶ島は江戸時代には「飢饉と疫病と無縁の島」と呼ばれていたらしく、芋や麦や陸稲といった穀物や野菜や果物が年中採れ、魚も炭も自給できるなど、江戸時代の生活基準から言えば、楽園のような島であったようだ。ただし、水源が乏しかったため、あまり風呂に入る習慣は無かったようだが・・・・。

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青ヶ島と似たような条件を抱えていた島としては、Part1で少し紹介した八丈島のすぐ隣にある八丈小島が挙げられる。あちらは、地形の険しさと周囲の潮の流れの厳しさを利用して、流人が更に八丈島で罪を犯すと送られる重流刑島として使われていた(何でも筏や小船では脱走不能という激しい海流条件が重流刑島にふさわしかったとか)。

昭和44年には島民の高齢化と蚊を媒介とした風土病の蔓延、潮をかぶりやすく農業に向かない土地と、島内の移動にも苦労する険しい地形、外界へのアクセスの悪さという地理条件から島を捨てて無人島になってしまったらしい。

しかも、島に残された家畜のヤギが野生化して異常繁殖してしまい、草を食い荒らして島が殆ど禿山のような状態になってしまい、それに伴う土砂の流出や付近の漁場の汚染といった環境問題に発展。とりあえずヤギを殺して駆逐しようという話になりかけたが、緑豆海狂犬か知らんが動物愛護団体が猛クレームを入れてきて頓挫、なら、てめーらが愛護精神を発揮して、捕獲して保護して里親なり引き受け先を探すなりやればいいではないか、という話になる訳だが、その段になると「アーアー聞こえないー聞こえないー」になるのが、この手の団体のお約束である

結局この動物愛護団体の主張につきあって費用を出したのは八丈町、元々山岳地帯に生きる生き物である山羊は、この島で完全に野生に戻ってしまい、後脚が異様に発達して崖のような斜面をぴょんぴょん跳ね回るようなカモシカのような生き物に進化というか先祖返りしまっており、漁船程度しか接岸できず、車も乗り入れられないこの島での捕獲作戦には多大な費用(一匹一万円の賞金をつけて猟友会の人間に追い込ませて投網で絡めて捕獲したらしい)と労力を要した末、ほぼ全部を捕獲したとか・・・

しかし、問題は更に続く。捕獲した山羊をどうするかである。元々家畜であった訳だから、家畜として山羊を飼っている所に無料であげればどうだ、という話になり、山羊料理で有名な沖縄の牧場に打診してサンプルとして山羊を送った。

で、沖縄の回答

「イラネ」

どうもこの山羊は野生に戻りすぎて肉はガチガチだしスジだらけ、まぁ煮ても焼いても食えないと・・・

今では町営の牧場や農家への貸付をしているらしいが・・・まぁお荷物であるには違いないとな・・・

で、山羊って臆病でストレスに弱い生き物らしく、移送中や捕獲中にショックでバンバン死んでしまったらしい。それをまた動物愛護団体が虐待だの虐殺だの何だの喚いているとか・・・山羊以上に煮ても焼いても食えないのはお前らだと言いたいのは自分だけであろうか

とまぁ以上はガーデン荘のご主人から聞いた八丈小島の話などをまとめた物であるが、周囲が切り立った小島なんというものは、ひたすら過酷な生活環境であるし、狭い分、生態系の破壊や天災で即窮地に追い込まれるというのが普通であり、青ヶ島みたいな飢饉知らずの島と言うのは大変珍しいと言える。

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ということで、もういい加減東京都謹製のダメスポット巡りはお腹一杯なので、山を降りて集落に戻ってみる。

集落の中に地の焼酎「青酎」の工場の看板が見えたので、坂を降りてみると、島らしい風情の建物が残っていて、やはりこういう味が無いと島じゃないよなぁと改めて思う。

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焼酎工場は「作っている所を見ると飲みたくなくなる」というレベルのアレな作業場だと聞いていたので、期待して行ってみたのだが、H19年に山村振興等特別対策事業の助成金を受けて一億九千万円をかけたとても綺麗な工場に生まれ変わってしまっており、自分的には残念な結果になっていた

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工場は休日だったので閉まっていたが、採用されているエアコンは三菱製の重塩害対策タイプのMr.SLIM。この島で空調機器の保守とか故障で呼ばれたら、たまらんだろうな・・・

ちなみに年間を通じて湿度が70%を超える土地なので、クーラーか除湿機が無いと家や服や布団がカビまみれになって地獄を見るとか。

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工場の隣には薩摩芋畑が広がっていたが・・・この島の畑は、空き地なのか畑なのか一見して区別が付かないアバウトさ全開なのが特徴である。特に集落近くの畑はビニールハウスが朽ちるままに放置されていたり自然に戻りかけていたりと・・・自家消費分を作るのが主であるせいか、本土のびちーっと整備された畑と比べると何だか凄い温度差を感じる。

百億円単位の税金の海に浮かぶ島という面と、中世から変わらない黒潮の中に浮かぶ絶海の孤島と言う二つの顔を持つこの島、観察すれば観察するほど個性的で突っ込みどころ満載である。

ということで、集落付近の観光は終えたので、次は昼食を取りに宿に戻ってから釣りをしに港に向かう途中に見た、内輪山内部の色々狂った自然環境と道路、そして多分日本一無茶をしている港の突っ込みレポートをお送りします。

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