亡命ロシア料理を作ってみた

これを通勤中に半分ほど読んで帰ったら、いつの間にか手が動いて亡命ロシア料理の「帰れ、鶏肉へ!」の章の再現をしていましたとさ。

【材料】

・鶏もも肉:2枚

・玉ねぎ:中2個

・ローリエ:2枚

・ブラックペッパーホール:適量(軽く一掴み程度)

・バター:一欠片(多いほうが多分美味しい)

・クレイジーソルト:お好み

この本、調理本と思わせて、その実態たるや「1977年に共産主義国家ソビエトから資本主義国家アメリカに亡命した知識人による資本主義体制下の食文化への辛口批評」という良く分からないジャンルのエッセイ集となっております。

今回の再現料理の元ネタとなった「帰れ、鶏肉へ!」の章は「ロシアでは翻訳物の外国書籍で鶏肉は雛鳥と約されているが、それは雛鳥の肉ではなく鶏肉である、しかし資本主義体制下で工業的に養殖された味気ないブロイラーは鶏肉とは呼べない。何ということだ!亡命して気づいた!我々は祖国で1.9ルーブルで買える牛肉よりも高い2.2ルーブルで鶏肉を買わされていたのだ!我々は亡命してカッテージチーズより安い鶏肉に回帰し突進するのだ!」という共産主義・資本主義国家双方への批判と祖国愛を散りばめたレトリックに満ち溢れた作品となっております。

「いい料理とは、不定形の自然力に対する体系の闘いである。おたまを持って鍋の前に立つとき、自分が世界の無秩序と闘う兵士の一人だという考えに熱くなれ。料理はある意味では最前線なのだ」

とロシア名物煮込み料理に対する情熱を盛り込んだ熱いフレーズを読んで思わず玉ねぎや人参を鍋にぶっこんでブイヨンを仕込んでポトフを作ってしまいました。

「残念ながら、アメリカでキノコといえば、いつもマッシュルームだ。ただし、ここで困ったことは、「いつも」という言葉のほうであって、マッシュルーム自体は何も悪くない。」とマッシュルームと祖国の干しキノコの素晴らしさを語られ、ためらわず八百屋(八百デフ)に走りマッシュルームを投入し、ローリエと乾燥ボルチーニと干しトマトとカットした人参と新じゃがいもを投入し、湯がいて薄皮を剥き種を取った生トマトとコストコで買ったジョンソンヴィルのCooked Bratsソーセージを放り込んで仕上げにコンソメと電動ミルで挽いたブラックペッパーを投下し完成するのである。

「紅茶はウォッカじゃない、たくさんは飲めない」そう、ポトフもウォッカじゃないので多くは飲めないのだ。

横のコンロでは鶏肉がフードプロセッサーでみじん切りにされた玉ねぎの海に溺れて弱火で90分煮込まれようとしていた。

水なんてものは不要だ。ただ弱火にかけて放置しておけば良い。

煮込んでいる間はブログでも書いていれば良い。単純なロシア料理には細かい手間はかからないのだ。そして非常に美味である。

煮上がった豚肉は官能的までにひたすら柔らかく、麗しく香ばしいオニオンソースの香りに包まれている。

個人的にはこのソースには一欠片のニンニクと一さじの醤油による風味付けがあれば完璧だ!

なにっ?貴様!醤油を勧めたな!

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ってな感じのちょっと高貴な感じのロシア料理ガイドブックなのであります。

他にも

「そんな下品な意見には反対だ、という人は、マッシュ・ポテトにすりおろしたニンジンかホウレンソウ、あるいは赤カブを加えてみたらどうだろう。この色どりの鮮やかさなら、「芸術は爆発だ」的未来派画家たちにも気に入ってもらえるはずだ」

「お茶をいれるのは驚くほど簡単だ。ここで必要なことはただ一つ、入念さである。だいたいにおいて、料理というのは才能よりも熱意を必要とするユニークな芸術だ。」

「アングロサクソンはお茶への愛着があったので世界的な帝国を作り上げたがティーバッグなどというものを発明したので帝国が崩壊した」

「料理人は素人であっても、しっかりした倫理的基盤を持たない意気地なしになる権利はない。誰でも好きなように食べればいいじゃないか、などと言う道徳的相対主義は、料理の道とは相入れないものだ。」

といった祖国の料理愛に満ちあふれた詩吟はこの人達でなければ書けないでしょう。

 

しかし、良い料理エッセイや小説というのはどれも洒落ていて、官能的なものです。

個人的には村上龍の「料理小説集」が非常に官能的でオススメです!

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