「特攻の島」から読む帝国海軍のWWⅡ潜水艦戦略 その1

佐藤秀峰氏の描く人間魚雷部隊の人間模様を緻密に描写したこの作品、親戚の潜水艦乗り→大戦末期に人間魚雷部隊に配属から還ってきたじーさまから以前話を色々聞いた事や、他の潜水艦乗り(伊56潜 元軍医 齋藤 寛氏、伊176潜 元艦長 板倉 光馬氏、海上自衛隊 あらしお元艦長 中村 秀樹氏)の著作などを読み漁り、当時の潜水艦戦略や戦術、日本の潜水艦の性能や特徴を考察する事にします。

最初に太平洋艦隊司令長官のチェスター・ W ・ニミッツが戦後に執筆した回顧録において

「古今の戦争史において、主要な武器がその真の潜在威力を少しも把握理解されずに使用されたという稀有の例を求めるとすれば、それこそまさに第二次大戦における日本潜水艦の場合である」(ニミッッの太平洋海戦史)

と書かれていた所から解説を始めたいと思います。

まず、潜水艦という特殊な艦種について、ニミッツ提督の言われていた「潜在威力」という面から解説したいと思います。

潜水艦とは御存知の通り、水中航走が可能な艦の事を指します。

大まかな能力のバランスを★で表記すると以下のようになります(「本当の潜水艦の戦い方―優れた用兵者が操る特異な艦種」より)

【潜水艦】

攻撃力   ★★★★
防御力   ★★
機動力   ★★
隠密性   ★★★★★
通信能力  ★★☆

【戦艦】

攻撃力   ★★★★☆
防御力   ★★★★★
機動力   ★★☆
隠密性   
通信能力  ★★★★★

【空母】

攻撃力   ★★★★★
防御力   ★★★
機動力   ★★★★
隠密性   
通信能力  ★★★★★

こうして見ると戦艦と空母は比較的似通った性質を持ち(攻撃射程の差はあるが)、それと真逆の性能、性質を持った物が潜水艦であると言えるでしょう。なお、巡洋艦や駆逐艦は戦艦の星を全体的に減らして、機動力をやや増した物と考えれば良いでしょう。

このような特性を持った潜水艦は、隠密性こそが最大の攻撃/防御双方においての優位性を保つためのポイントとなるわけなのですが、隠密性を維持しつつ戦闘を行うためのポイントとして以下の4点が挙げられています。

・隠密性を保障するための自由な行動

・適正な配備

・攻撃目標の選定

・正確な情報の把握

 以上の四項目を総合すると、潜水艦の自主性を尊重し、隠密性を維持するため無理な移動を局限し、敵の対潜警戒が希薄で艦船の交通量の多い航路集束点等に配備させるような計画が好ましい。そして、攻撃目標は脆弱な目標ほどよい。
つまり、最良の潜水艦作戦は、商船を
目標にした交通破壊戦という結論になる。
また戦闘部隊を相手にする場合でも、対潜警戒の
緩い部隊、あるいは独航艦を狙うべきであり、攻撃目標以外にも、付近に存在する対潜掃討部隊や哨戒機へも配慮する。攻撃目標、攻撃時期、攻撃の場所等、現場の潜水艦に自由な裁量を与える作戦計画としなければならない。
これに加えて、潜水艦の作戦を支援するため、
上級司令部は継続的に情報を収集し、情勢を把握した上で、潜水艦には情報を配布して、制約の多い潜水艦により効果的な行動をさせる努力を惜しんではならない。
 極端な脆弱性を持つ潜水艦には、決して無理をさせてはならず、徹底して隠密性を保証し
てやらねばならないということである。

次に潜水艦の索敵能力に関して解説します。潜水艦本体が持つ探知能力は以下の4点であり、強力なレーダーや艦橋からの光学的な監視が可能な水上艦とは異なる索敵能力を持っています。

・音響探知能力:聴音探知機やアクティブソナー装置による探知
・光学探知能力:潜望鏡や艦橋における目視による海上監視
・電波探知能力:敵の通信電波やレーダー電波を探知、いわゆる逆探
・磁気探知能力:モーター等の影響で磁化した船体による地磁気の変動を感知して海中に艦船がいる事を探知

以上より、潜水艦が隠密性を発揮するには

・音を発しない、無用な移動をしない
・浮上しない、透明度が高く浅い海域に立ち入らない
・敵の哨戒が厳しい海域に近づかない
・不用意な通信をしない
・船体を定期的に消磁する(デパーミング)

といった工夫が必要です。

で、大日本帝国海軍の潜水艦に対して戦後ニミッツ提督が下した評価なのですが・・・

「日本海軍の勇敢で、よく訓練された潜水艦乗員は、ひとつの偏向した方針および近視眼的な最高統帥部によって、徹頭徹尾無益に消耗され、また実力発揮を妨げられたように見受けられる」

どうしてこうなった :cry:

「特攻の島」から読む帝国海軍のWWⅡ潜水艦戦略 その1” への3件のコメント

  1. 当時の近衛公をはじめとする裏切り者(結果的に)どもの存在のせいか、
    どうしても内部に共産主義者たちがいて、
    日本に負けてほしかった勢力があったと思います。
    そういう、内部のクソどもの存在はどこの国にもある程度いるものですが、
    私は、そういう人たちが何の因果か枢要な権力を持ってしまったことが、
    かような無残な結果になってしまったのだと思いました。

    というのも、私の曽祖父は海軍将校で、中尉で戦死しました。
    なので、私の感情では、軍が無能だったと言われるたびに、
    何か否定する材料を探してしまうのかもしれません。
    ちなみに今は27歳です。繊維関連の会社に務める者です。
    歴史は、大学の時に真剣に学び始めた部類なので、
    きっと私の考えは誤っていると思います。どう思われますか?
    よろしければご教示ください。

    • はっきり言いますと、負けた原因は

      ・戦略的な終戦に向けた戦略目標や落とし所の欠如(日露戦争と比較されると良いかと)
      ・工業力、技術力の絶望的な格差
      ・諜報能力の絶望的な格差
      ・国内に充満していた悪い意味での楽観論や楽天主義
      ・国民の絶望的な貧富と身分格差
      ・先の民主党政権もを上回る悲惨な政治的機能不全
      ・政治不信とイケイケ暴走気味ながらも実績を出し続ける軍部に期待する民意のコントロールアウト

      の集大成だと私は思っています。

      面白いことに、板倉光馬氏の著作を読むと帝国海軍のおおらかさや勇敢さや高度に自律した作戦行動の巧みさを支持したくなりますし、中村秀樹氏の著作を読むと海自含め海軍の悪弊や硬直した思考を批判したくなります。
      つまり物事には裏表が必ず存在し、完全にきれいな組織は存在し得ない、その制約を受けた上で非常時に効果的に動ける組織を構築できれば勝ち、出来なければ負け、って辺りなのではないのでしょうか。

      • なるほど。今まで考えていなかった方面での指摘が多く、参考にします。
        ありがとうございます。
        後半のお二方の著作は存じ上げませんので、
        なんとも言えませんが、機会を見つけて読んでみたいと思います。

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