ミキティ解体新書 その3 「死ぬほど努力したら本当に死んだ」

その3は、いよいよ踏み込んではいけない領域へと踏み込んでしまったミキティの暴走が止まらなくなります。

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私の偏見かもしれないのですが、有機素材やオーガニックショップって、大体悪評ぷんぷんな新興宗教団体の近くによくあるんですよね。家の近くだと某火祭のA宗直営の店とか。そういや風評被害量産マンガ美味しんぼもオーガニック狂いでしたねぇ・・・

そんなワタミにガソリンを全身に浴びた聖火ランナーが香港からやってきます。

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ミキティやミキティをモデルにした自伝的作品を読んで感銘を受けた香港人のデレック・リウさんが、香港でワタミを立ち上げたいと乗り込んできます。で、最初は時期尚早と断っていたのですが半年ごとに押しかけられてきて根負けし、彼を研修へ送り込みます。

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研修先で彼がまず命じられたのは「皿洗い」です。

現場仕事を覚えるのは大切だと思いますが、食洗機を使わない辺りが大変ワタミらしいです。ジョッキやコップは油膜が取れにくいのと、油膜がわずかでも残るとビールの味に影響が出るらしいので、手洗いのほうが良いらしいのですが、普通の皿であれば下洗いだけして食洗に放り込んだほうが楽だろうに・・・

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そして半年で12kgのダイエットに成功。ラ○ザップもビックリです。でも、彼みたいに現地法人を立ち上げて「独立」という明確な目標があるのであれば、期間限定で無茶するのは悪くはないと思います。逆に言えば、こんな仕事を続けていたら寿命がマッハで縮むことでしょう

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こういう理念を持つのは別にいい事かと思いますが、現場スタッフの声を聞いて労災認定の自殺者が出るとは如何に?

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へーそうなんだー(棒)

そんなワタミの現場教育はこんな調子だそうです。

> それから、上司から「お前、ちょっと、空を飛べよ」って言われたことがあって、それに対して、「空は飛べません」って言ったら、「お前、それはダメだよ。飛行機をどうやって作るかを考えて、その予算を具体的に考えて、私はこうやって空を飛ぶことを実現すると言わなければ、お前それはダメだよ」と上司に言われました。とにかく、「無理」って言わせてもらえないんですね。ワタミはどんなに人が少なくても、どんなに理不尽なことがあっても「無理」とは言わせてくれないですし、言わせないような教育を受けますね。それで月に300時間も働くやつが出て来たり、数万円も寄付をする社員が生まれるんだと思いますね。

上から言われたことは絶対で「無理」とは言わせない組織と言われていますが、まあ確かに上と現場の意識は一体化していますよね。建前とは随分違う洗脳や刷り込みという形でですが。まー予算をくれるなら鳥人間コンテストに参加だろうが、羽田でチケットを買おうが空は飛べると思いますが、そもそもその予算や人的リソースがない状態で根性論でどうにかしろが本質なのでしょう。

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続いて先代の社長をやっていた桑原豊さんが現場の負荷低減を目指し、仕込みを店舗から工場へと移転させます。と言えば聞こえが良いですが、現場の人間をごっそり引っこ抜いて工場や新設店舗に送り込んだために各店舗の店員密度はより希薄になります。教育?ミキティのビデオレターや著書の感想文を書くことですか?それとも「空を飛べ」みたいな禅問答ですかね?

なお、桑原さんは「企業理念の中に『社員は家族であり同志』という言葉がある。そういう人に対して、労使の関係は基本的に存在しないと思っている。」という迷言を残されている方であります。

「家族」というならミキティや役員の資産を管理団体に預けて、本人死亡時に社員に配分してやればいいのにと思うのですが。当然そんな事は一切せず、社員は奴隷待遇で徹底的にこき使われ、経営陣がその利益を一方的に吸い上げるのが新自由主義の会社組織です。ちなみにワタミでは会社の株を買うように精力的に勧められるようですが、当然ストックオプション何ぞは一切なく、自腹での購入をするしかありません

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こうして半セントラルキッチンへと回帰した事で、現場に求められるスキルが低下し、大規模出店が可能になった反面、逆に言うと他社差別の根源であった「客単価3000~4000円程度で、店で調理したキチンとした物が食べられる」というメリットが削がれていきます。その意味、大戸屋に飲み要素を追加したような方向性であった訳ですね。

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とは言えども時は2000年台初頭、ワタミが時流に乗って一番元気があった時代でした。

しかも氷河期世代が大量に就活市場に流れ込み、企業は採用を極限まで絞っていた時代です。(うちの会社でも今年の採用数の1/4~1/5しか取っていなかった時代)

優秀な人材ですらチェーン居酒屋業界に飛び込むのが珍しくない時代を反映して、ガンガン人を取って落伍者はかなぐり捨てていくというスタンスが確立していきます。

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本当に死んだけどな!

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このマンガと並べるとこの遺書の哀しさが更に際立ちます・・・ :cry:

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2016年現在「和民」ブランドはブラック企業大賞連続ノミネートという栄冠を掴み、すっかりダーティーなイメージがつきまくって半壊状態、他も「ワタミ」が付くブランドは軒並み失墜し見向きもされなくなっています。現在のワタミにおいては「和民」を冠さないブランドだけ好調なことを考えると、ミキティの価値・倫理観が社会から完全に否定されたと考えるべきでしょう。

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逆に言うと、去る者追わず「ミキティ理念に賛同できなければ辞めて、どうぞ」なのですが、最新バージョンのブラック企業と比べると随分優しいように感じます。暴力、セクハラ、パワハラ、脅迫、辞めさせないなどのパワー系ブラック企業と比べればかなりソフトと言えるでしょう。

とは言えども「理念、夢」を餌に低賃金で過酷な現場に優秀な若者を引き込むという新たな労働モデルと会社の利益の稼ぎ方を作り上げたミキティの手腕は評価されてしかるべきでしょう。

そんなこんなでガンガン急成長を続けるワタミですが、急速過ぎる出店と1000店出店という数値目標至上主義が企業活動の限界点に迫ってきます。

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2000年台中盤になると、平社員に店長役を丸投げにする「呼称店長」が横行し、セントラルキッチンへの回帰の問題もあり、現場の品質管理に陰りが見えてきます。

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普通のワンマン社長ならここでパワハラゴリ押しで現場の自己犠牲を更に要求する所ですが、そこは出店ペースにブレーキをかけて人材育成にリソースを割り振るという英断を下します。ミキティを評価するとすれば、ここで数値至上主義を減速させて破綻を食い止めようとした事です。今までがイケイケ過ぎたため、間に合いませんでしたが。

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そう、この時点で現場はどうしようもないほど疲弊しており、大した調理技術を要さない簡易料理とただの長時間接客と皿洗いと清掃に明け暮れる単純で過酷な労働環境+この時期から始めたミキティの様々な施策への不満がジワジワと広がります。そしてバイトへの賃金未払いも横行していた一部の店を中心にポロポロと忠誠心の低下した人材が逃げ出していきました。それに伴い2006年に労基署へアルバイト店員が労働基準法違反の告発に走り2008年にはついに過労による自殺者まで発生、それぞれドロドロの裁判沙汰になる騒動へと発展していきます。

更に増えすぎた店舗と悪化する一方の人材不足と過重労働のため、衛生管理能力も低下し、2007年以降頻繁にノロウイルスなどの食中毒を起こすという「飲食店としての基本」がなっていない状態へと転落していきました

ついにここに来て「足りない人的リソースをミキティへの理念や忠誠心で補う」というモデルが崩壊し始めた訳です。

 

そんな崩壊が始まった2006年に、ミキティは超えてはいけない一線を超え、ワタミの現場崩壊の烽火を上げることになります。

 

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そう、病院で三ヶ月ルールでたらい回しにされるお年寄りを何とかしようと、激安老人ホームの設立と運営を始めようとします。ま、これも色々真っ黒な裏があるのですが・・・

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このミキティの決断がワタミ黄金期の終わりの始まりとなりました

(長くなったので分けます つづく)

 

ミキティ解体新書 その3 「死ぬほど努力したら本当に死んだ」” への3件のコメント

  1. 読んでて眩暈がしてきました。すべて人力でなんとかしようとするシステムはミキティが嫌うソ連の収容所経済システムと同じとしかいえませんね。逃げれるだけましとはいえますが。

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