ミキティ解体新書 その1 「計画系復讐男子ミキティ」

色々世間で叩かれているミキティさんですが、批判だけしても面白く無いので、どうして彼がこうなってしまったのかを、擁護派、批判派双方の意見を見つつ俯瞰してみる事にしました。

批判書としてはコレを。

擁護というか自伝的なアレはコイツを参考にしました。

当然古本で買いましたよ!彼に印税が入るのは嫌なので。

で、ミキティさんが言われていることをまずはまとめてみましょう

・苛烈な労働を社員に課して利益を吸い上げることしか考えていない
・独善的な価値観を上意下達で社員に押し付け、たとえ死人が出ても頑なに自分の非を認めない
・理想や夢の押し売りがもはや宗教レベルで薄気味悪さを感じる
・関わった業界が全てブラック化した挙句衰退するという「業界破壊魔」としての実績
・歯が浮くようなキレイ事を言う割には、お金と権力と女が大好きな俗物

これらはまー間違った批判ではないと思いますが、居酒屋業界内での相対的な評判としてはワタミは実はそれほど悪くなかったりします。

某転職サイトでの評点ではワタミは2.82点と、居酒屋チェーンの比較としてはモンテローザ2.59点、日本海庄やの大庄が2.58点、東京チカラめしで一瞬だけ有名になった三光マーケティングフーズ2.54点と2.5点台が多い業界としてはポイントは高めです。なお鳥貴族の3.26点には敵いませんが、そのあたりのメカニズムに関しては後ほど追って解説しましょう。

ということで、まずはどういう経緯でミキティがミキティになったのかを紐解いてみましょう。

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「ミキティは何で経営者になろうとしたん?」

→親父がTVの製作会社を経営していたから。母親も別の会社を経営していたのでそういう意識が高かった。

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「何でミキティ泣いているん?」

→母親が早世してしまい、父親の会社もあぼんして一気に落ちぶれたから。

ということで、この時点でミキティの心中に「社会への復讐」という意識が芽生えていきます。つまりミキティのモチベーションの根源は「憎悪」である訳です。

「絶頂からの落ちぶれ」を体験したがために、彼は勝ち負けに拘り、社会から落伍することを極端に恐れるようになるわけですね。これがひとつ目の節目となります。

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そして、高校生になったミキティ。卒業後は即起業しようと思っていたが、担任に「起業するにしても大学は出ておいたほうが良い」とアドバイスを受けて、高3から急遽受験対策を始めるも、徹底的に計画を立てて無事明治に合格。

旧ソビエト連邦的な計画経済に基づくノルマ・数値至上主義の原点がここで誕生するわけであります

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大学ではチャリティ音楽イベントの主催を行い、大成功を収めご満悦。

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ここでふたつ目の節目、「ボランティア」「自己満足のための無償労働」の素晴らしさに目覚めます。まーでもNPOを立ち上げるなり純然とした篤志家として活動する分にはいい傾向ですよね。まーボランティアが本業や資産があって食える人が余暇でやるものだという意識がスッポ抜けているのが大問題なのですが。

まーそうならなかったのがミキティをミキティたらしめる結果になった訳ですが。

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そして卒業後の起業計画を立てるミキティ。「少ない資本で起業できる」「(バブル期の世相的に)時流に乗れる」という判断からIT土方ブラック飲食業のどちらかにターゲットを据えます。

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そして見聞を広げるため世界を放浪するミキティ、文系って暇でうらやますい

そこで当時のソビエト連邦の国営店のサービスの悪さに激おこぷんぷん丸になる。

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堕落したアカの跳梁跋扈を許せば、愛國戦隊大日本よろしく家は焼け、畑はコルホーズ、君はシベリア送りだ!と反共主義に目覚めたミキティ。

ここで徹底的な資本主義+新自由主義へと傾倒する事となります。

なお、2010年バージョンでは仮想敵国の変更に伴い広場は天安門へ・・・ :-(

もしも 日本が 弱ければ
中共が たちまち 攻めてくる
家は焼け 広場は 天安門
きみは粛清 されるだろう
日本は おお ぼくらの國だ
赤い敵から 守り抜くんだ
カミカゼ スキヤキ ゲイシャ
ハラキリ テンプラ フジヤマ
俺達の日の丸が 燃えている
GLOW THE SUN RISING SUN
愛國戦隊 大日本

個人的には「家は焼け 東京は 東京(トンキン)府 君は下放 されるだろう」でもいいような :-(

※愛國戦隊大日本とは庵野秀明などが作った自主制作特撮映画、戦隊物をベースに当時のソビエト連邦と日本の右翼を徹底的におちょくったパロディ作品。試写会では激怒する人と腹を抱えて笑いまくる人の真っ二つに別れたという伝説の作品。

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次のイギリスでは中国人お断りホテルの対応に激おこのミキティ。って今になって考えると、ふつーの対応では?備品盗むわ、そこら中で騒いで汚すわ、スーパー南京虫とか持ち込むわだからなぁ・・・

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続いて立ち寄ったNYのライブレストランKenny’s Castaways(現在では閉店)の雰囲気の良さと楽しさに感動するミキティ。人類みな兄弟!ラブアンドピース!な人類愛に染まっていきます。

ま、これも悪い事ではないのですが・・・常識的な範疇に収まっている限りは・・・

こうして世界旅行でに彼が会得したものは「極端なアンチ共産主義、社会主義」「極端な自由資本主義」「人類愛」と言える訳ですが、これらを組み合わせた結果がああなると思うと何とも言えぬ複雑な気分になれます。

何はともあれ、Kenny’s Castawaysでの思い出が彼に「居酒屋」を始める切っ掛けになりました。そして帰国後、大学を卒業し一年間会計事務所?で働き、経理の実務を勉強した後、事業資金を貯めるために佐川急便のセールスドライバーを始めます。

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が、給料は良いものの、勤務の熾烈さは半端無く、キリンのような睡眠方法で秒単位で寝る特技を身につけながら稼ぎまくります。

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一日20時間におよぶ労働を続け、300万円を一年で貯めこむ訳ですが、ゾンビ状態で仕事をしながら「給料が高くとも体を壊すようじゃ意味は無い」「今日こそは辞表を叩きつけて・・・」など、今のワタミグループの状況を鑑みるとツッコミどころ満載の台詞をほざいています。

この時の教訓をいい方向に生かせば良かったのですが、

「特殊技能が不要だがキツくて短期で稼げる仕事は期間限定でやる物である。借金に追われていたり、身内の入院や事故などで急な出費が発生したなどといった訳ありの人間がやる短期労働市場に適合した業種である」

「こういう仕事は労働と金を交換する以上の関係を会社と持つべきでないし、そんな余裕もない。ただし出戻りなどを寛容に受け入れるなどの柔軟な労働関係を提供するという意義はある」

という教訓と真逆の方向に突っ走ったのはまことに不思議でなりません。

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そして、同時につぼ八へノウハウを盗むために送り込んでいた友人の黒澤君を引き抜いてライブ酒場を始めようとするミキティですが、つぼ八の総帥である石井誠二氏に説得されて、彼の傘下のフランチャイズ店として起業する事を勧められます。

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石井氏が提示してきた条件がかなりの好条件で、ミキティが思わず疑ってかかるほどの内容(融資先紹介、中央線沿線の高円寺北口店という優良店の経営権を譲渡など)ですが、この石井誠二氏は、近年までの動きを追ってみるに、どうやら若手と新事業を育てるのが楽しくてたまらないというタイプの方のようで、見込みのある若手飲食業界志願者を見るとホイホイとノウハウを教えたり事業を支援するというナイスガイ。

「ウホッ!いい男!」と答えたのかは知りませんが、ホイホイと石井氏についていってしまうミキティ。

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結果は大成功!高級クラブで学んだ接客術を居酒屋に転用して大繁盛します。今時こんな接客をする居酒屋自体が骨董品ですが、当時としては斬新なやり方であった事と、バブル真っ盛りであったことが功を奏して驚異的な売上を達成します。

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そして店舗も順調に拡大していき、数千万円にも及ぶ収益が手持ちに残ったミキティ。家や車を買うかどうか考えた末、社会保険に加入して社員に還元する事を決断!

え?入るの義務でしょ?ええ、その通りですが、フードサービス業界では入っていない会社も多く存在するのが実情ですので、業界的には良心的な措置と言えるでしょう。業界自体がモラルハザード状態で狂っているのが前提での話というのが痛い所ですが :-(

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意外なことに、ワタミはバイトに対してもきっちり福利厚生を法定通りに提供しており、バイトへの払いも1分単位できちんと管理して払うなど(一部店舗では不正が指摘されて問題化していましたが)業界内では比較的優良?な労働環境のようです。少なくとも給与未払い、辞めさせない、暴力などのブラックバイトとは違うようです。ただし、社員は地獄というのはどこも同じようで・・・同じ時間働くならバイトのほうが割が良いのは居酒屋の特徴なので、業界並とも言えなくはないですが、上図のように「文化の創造」や「人類社会の発展や幸福」やらといった所まで理念がぶっ飛んでいる所が異様です。

居酒屋がどうやって文化を創造するのか、人類社会を発展させるのかという点については色々突っ込みどころ満載なのですが、江戸時代に屋台料理から和食の食文化が開花していった事を考えると、庶民料理から文化が発展することはあり得るのかなとは思いますが、ワタミが何か新しい食文化を開拓した記憶はついぞございません。

そんなミキティですが、無理な拡大路線で資金がショートしかける危機に瀕します。

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白札屋との提携で出店した上大岡の店が大コケしたのが主な原因なのですが、ここでも石井誠二氏の口利きで資金を融通してもらい、ピンチをなんとか凌ぎます。

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その石井氏も株式を握っていた商社(イトマン)の手によってつぼ八から追放され、調理をきちんと厨房で行うという新たな形態の居酒屋(八百八町)を始めていました。

石井氏とミキティの差が何であるかを考えると、ミキティはこの時点で現場からは引いて後方で経営に専念していた点であるといえるでしょう。石井氏はとにかく現場が好きで現場で動きながらアイデアを具現化するという前線指揮官タイプ、ミキティは自分の社会的な権威やヒエラルキーを上げていくのが大好きな上級将官タイプという差です。

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そしてミキティが選んだ道はイトマンとの全面対決とフランチャイズ傘下からの離脱と和民ブランドでの店舗立ち上げというチャレンジャーな道でした。

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ただし、この「居食屋」というスタイルも石井氏の「八百八町」から暖簾分け的にコンセプトを受け継いだ物であり、独創性はあまり無かった事が今後のワタミグループの運命を変える結果につながります。

(つづく)

 

 

ミキティ解体新書 その1 「計画系復讐男子ミキティ」” への4件のコメント

    • その3辺りでどう社会に復讐したかは解き明かせると思いますぜ。
      島田清次郎なんかと被るキャラなんですけどね「世の中への憎悪」「強烈な向上心」「他人をゴミのように扱う苛烈さ」辺り。
      ただ、彼は本当にしぶとく、生き残ることに特化した才能を持っている辺りが商○ファンドや米通信の連中と共通なのかと思います。

  1. 生い立ちから掘り下げていて、非常に面白く拝読いたしました。
    今回のところまでは、創業者の成功譚として教科書になりそうな雰囲気ですね。
    (ところどころ闇を感じますが、笑)
    将官型として後方に引くのが早すぎたのが、契機かも知れませんね。
    奥の院に引きこもると現場のことが何も分からなくなって、理想主義に走りがち、というのは(海外は知りませんが)わが国では割と良くある問題に思えます。

    • 自己顕示欲が強い、短期間で大成功、創意工夫よりイノベーションよりも努力を重んじる、辺りが要因ですねー
      他にも色々あるのですが、その辺りはその2以降で~

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