【書評】「東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇」の暗すぎる闇

日経ビジネスオンラインの「800人の証言で掘り起こす東芝の“闇”」を読んで、かなり危険なきな臭い空気が漂っていたので買ってみました。

 

まずは東芝内部にどのような問題があったかを書き並べていきましょう。

・西田+室町(PC,半導体派)と佐々木 (原子力派)の軽電vs重電の派閥抗争。

・過去の成功にすがって権力の座にしがみつく長老たち、過ちを認めないがために軌道修正もできないまま墜落軌道にきりもみ状態で突入する名門企業の断末魔

・リーマンショックや福島第一原発事故などの「外乱」に対して脆弱な事業体質、「デュアルモノカルチャー経済」とでも言うべき極端かつ脆弱な経営体質。

・リーマン・ショック後、西田が事業撤退を社内カンパニーにちらつかせながら「チャレンジ」目標の達成を強要していた。

・原子力畑出身かつ豪傑タイプの佐々木氏時代には原子力ルネッサンスに踊りつつPC半導体事業へのコスト改善を怒鳴りながら強要するという派閥抗争の延長線上とも言うべきパワハラを実践。これが下流へとエスカレーションしながら伝播していった。

・2006年に原子力ルネッサンス時代にギャンブル性の高い米大手原子力メーカー「ウエスチングハウス」の買収を時価総額の数倍という法外な値段で行い、「のれん代」の計上が大きなプレッシャーとなっていた。

※のれん代とは飲食店ののれんの如く、それ自体には価値は大してないが、屋号のブランド力や将来の収益性を見込んでの買収額のうち実資産価値を上回る分を指す。プレミア価格分とでも言えば良いか。

・のれん代は20年かけて分割償却されるが、減損が発覚すると一括精算をする必要が有るため、必死で隠蔽工作をかけ続けた。

・「バイセル(製造委託先への一種の飛ばし)」「購買品の支払期日の大幅先延ばし(180日)」などのトリックを多用し帳簿上の赤を隠蔽し続けていた。

・経営陣が監査委員会に天下らせ、内部統制の仕組みを完全にシャットダウンして不正の辻褄を合わせることが常態化していた。

・原発の新規建設では福島第一原発事故以降、安全基準がより厳しくなった影響もあり、事故以前に受注した案件がコストオーバーラン(予算超過)する事が頻発し、赤字を垂れ流す結果となった。

・そもそも事故後原発の新規建設が世界中で凍結されたり延期されたりで、当初の目論見の2015年までに39基を受注するという計画が破綻状態であった。

・そもそも財務体質が良くない東芝にこれらの経営判断ミスが加わり、手がつけられなくなる

・不正を黙認する奴が出世する、自分の任期だけ部門黒字を達成するように操作する奴が経営陣を形成するようになり、コントロール不能に。半導体部門でも開発投資を渋って性能や品質を書類上で改ざんする事が横行。

・損失の穴埋めのために「チャレンジ」という名の無茶苦茶なノルマを現場に要求。関連会社や取引先にも役員を送り込んでパワハラの限りを尽くす。

・合わなくなった辻褄は実現不能なレベルの販売目標で穴埋めするのが常態化、今では原発の今後15年間の目標受注数が63基まで拡大。どう考えても無理ゲー状態。

・責任調査委員会の徹底的にぬるい調査内容と一人あたりたった6000万円ぽっちの賠償金請求(年俸億単位の相手に対して)しない経営者に優しい世界。

・そして、不正に関わったと思われる役員が今でも名誉顧問として社用車に乗り、専用室を本社に充てがわれてふんぞり返っている。

 

とにかく酷かったのがパワハラの嵐、上から下へとどんどんエスカレートして滅茶苦茶な要求を叩きつけられている現場の悲鳴でした。

例えばコストカットを求められてのパワハラ会議の生々しい現場のレポートでは

課長は必死に答えようとするが、怒鳴り声で遮られる。
東芝では「チャレンジ」と称し、無理な業務目標を強要することが常態化していた。
「施策」とは、チャレンジで掲げた数値目標を達成するための事業計画を意味する。
机をパンパンと激しくたたきながら、詰め寄る上司ら。調達先の切り替えなど新たな取り組みを示せと強要している。
課長「我々が今、考えられるのはこのアイデアだけです」

上司B
「160(百万円、この課長に課せられたコスト削減の目標額)はコミットしたんでしょ。数字が出なかったらどうやって埋めるんですか。本当にやる気があるの。頭を使えよ」
上司C
「今日は20日で、時間がないんだよ。今月はどうするの。160に対する施策を出してくれ」

勝ち組と言われている同業のM社なんかは外部委託は極力せずに、人員を極限まで削減しながら自社生産を残したのと大きな差があります。人の減らし過ぎで色々弊害も出ていますが・・・ :cry:

東芝では製造の外部委託比率が高まり、調達部門のカバー範囲が広がっている。比例して、調達部門へのコスト削減要求は高まる一方だ。私のグループだけで、年間数億円のコスト削減が「チャレンジ」目標として課せられている。とても達成できない。
チャレンジは「必達目標」と同義だ。カンパニー社長が出席する会議で、達成不可能な目標を自己申告させられ、その後の進捗報告の会議で上司から締め上げられる。その際に繰り返される言葉が「施策を出せ」。調達は相手先との交渉事なので計画通りに進まないことが多いが、その場合には別の施策を出すよう求められる。

数年前ウチでもこういうのが流行りましたね。当時の部長から滅茶苦茶な要求を出されたまくったのに対し「下請法を守った上では貴方の要求は達成できません。強要するなら貴方の責任にてお願い致します。」とガチッと拒否したら懲罰的な仕打ち(仕様外の機能を人に黙って売り回ってから転勤)などなど、そーぜつな報復を食らった思い出が・・・。あまりにも酷い仕打ちだったので、この前直属の上司の転勤に伴い今の部長に配置転換を希望したら盛大に逆ギレされましたが、なんでやねん。 :-D

不具合を解消しきれていない商品が、量販店などで販売される。それは、「技術の東
芝」を信じる消費者に対する裏切り行為にほかならない。そして、社内政治にたけた人か
ら出世していく。義憤に燃える若手社員が、隠蔽の実態を明かした。

ソニーの家庭用ゲーム機、プレイステーション3にも使われた高性能半導体「CELL」を使ったテレビ。2009年に100万円を超える値段で発売したけど、社内では「伝説の失敗プロジェクト」と呼ばれている。その後に発売した裸眼3Dテレビも話題は集めたが、技術者としては「こんなの売っていいのか」というレベルの製品だった。
買ってくれた人には本当に申し訳ないと思うが、いずれも不具合だらけの状況で発売日を迎えてしまった。東芝製品と名乗るのが恥ずかしいぐらいだ。それでも発売を強行したのは、その年の年末商戦に問に合わせるため。開発スケジュールが遅れに遅れていたので、不具合を解消せずに見切り発車した。

CELLは当時から「凄いのは理解できるけど、これで何をする気なのやら」と非常に疑問を持ったものです。色々先進的な思想を持っていたのは確かですが、先進的過ぎた感がありました。Mはそもそも半導体からパパっと撤退した上、AV事業も特殊用途や業務用特化といった方向に行ったのと対称的であります。

3DTVはリフレッシュレートが高いので2Dの画質も良くなるという副作用のほうが大きかったような・・・裸眼3Dは花札屋の3DS以外あまり目立った成果が出ていませんしね。

他にもスマートメーターのシステム構築能力無視の赤字垂れ流し受注やPCの故障修理引当金を利用した不正会計テクニックの数々がふんだんに記載されておりまして、見所満載の資料となっております。

はてさて、この本をどう評価するとかと言われると・・・うーん・・・新自由主義に染まった腐れ団塊世代が昭和の名門企業をギタギタに破壊し尽くして逃げおおせようとした犯罪記録といった感じでしょうか。

電機産業は皮肉なことに戦後勃興した企業がほぼ壊滅し、財閥系のみ残ったのは何ともいえぬ結果なのかとと思います。

しかしまー東芝の旧経営陣がこれで罰せられずにのうのうと余生を送れるとしたら、とんでもないモラルハザードを日本社会にもたらすことになるでしょう。

そうならない事を切に願うものですが、恐らくはそうなるのでしょうね。 :-o

【書評】「東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇」の暗すぎる闇” への3件のコメント

  1. 財界総理を輩出した企業にしては、何ともみみっちい会計テクが横行していたのね。。。
    まー団塊世代の余生を養う体力は、もう残っていないでしょうね。

    • ウエスチングハウスの損失隠しには相当なテクニックを駆使していましたけどね。

      黒字セグメントと赤字セグメントを組織改編で混ぜて赤を隠蔽したり、アメリカ側の監査法人で赤認定されたセグメントを東芝の本社直下の原子力部門と合体させて、連結では赤にならないように帳簿上操作したりと・・・

      • そのスキルを本業でつかえ(笑) とゆーか、そのスキルもちは米国で財務コンサルができるだろ。この手口が出版されたら、もう陳腐化して売り物じゃなくなっただろうけど。

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