「累犯障害者」「獄窓記」を読んでみて

今回は政策秘書給与の名義貸しと給与流用で有罪判決を受け、黒羽刑務所に懲役一年六ヶ月服役した山本譲司元衆議院議員の手記「獄窓記」及び、これがきっかけとなって出獄後に取材を始めた障害者と犯罪の知られざる関係について書かれた「累犯障害者」の二冊を読んでみました。

流石、インテリな方、それも福祉社会問題の現場を渡り歩いてきた市民運動家上がりの元政治家が見た現場の分析や考察は非常に奥が深く、重いものでした。

[刑務所の現実について]

800px-広島刑務所01

・慢性的な収容人数超過、現場の刑務官も過重労働に追われており疲弊している。威圧的な態度をとる若手刑務官は圧倒的多数の受刑者への「恐怖」の裏返しでこういった態度を取るようになる。

・刑務所は「ただ懲役囚を大人しく規律に従わせて働かせるだけの軍隊的な場所」であり、社会に復帰させるための矯正施設とは言い難い。

・殺人犯など重罪人の大多数は悔悛の姿勢を見せているが、軽犯罪(ションベン刑)を繰り返して出入りしているダメ人間も多数存在しており、そういっ た類の輩は極めて粗暴で、他人の仮釈放妨害のため喧嘩を売りまくったりするなど、獄中でも「失う物のないダメ人間」の強さを発揮している。

・明治時代に規定された「監獄法」に則った前時代的な刑務所の管理方法が、人権侵害や問題を深刻化させている。(2006年に刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律へ改正され、いくらか改善されたとか)

[障害持ち受刑者の実態]

・刑務所には多くの精神障害者や知的障害者が収監されており、そもそも罪の意識が無い、理解できない知能レベルの人間が、福祉にも見放されて軽犯罪を繰り返しては刑務所に入っては出るという負のスパイラルが構築されている。

・収監されている軽度知的障害者の多くは、健常者の犯罪者やヤクザに利用されて罪をなすりつけられたり、ヤクザの鉄砲玉や運び屋などに仕立てあげられたり、薬漬けにされ売春の商売道具にされたりなど、いいように利用された挙句獄に落ちてきた者達であり、彼らの受け皿が闇社会しか無いのが問題を重篤化させている。

・工場での高度な作業をする能力のない障害者には、色蝋燭を色別に分別しては混ぜる、紐を結んでは解くといった何ら生産性の無い作業をひたすら機械的にやらせており、障害者の社会復帰に何一つ役に立たない作業で時間を潰している。

・痴呆や向精神薬漬けの精神障害者の下の処理などの介護作業を暴力沙汰で悪名高い精神病院の元スタッフなの懲役囚が行っている。当然そのやり口は精神病院の隔離病棟そのもの。

・日本の障害者福祉は重度障害者に偏重しており、軽度障害者のケアには恐ろしく冷淡。

・半分寝たきり状態の重度の知的障害者より、刃物を持った軽度の知的障害者の方が数百倍は危険な存在であるという不都合な現実。(レッサーパンダ帽男殺人事件の犯人も軽度の知的障害者)

[障害者の罪と罰]

・ろうあ者の手話は世間一般で規定されている手話とは異なる。手話ニュースを見ても多くのろうあ者はその内容を理解できない。ろうあ者による手話は「曖昧な表現が苦手」であり、日本語とは異なる体系の特殊な言語コミニュティと文化を構築している。

・ろう学校での教育は日本語(口語)との互換性を重視した教育をおこなっているため、まるで外国語で授業を受けているような状態である。そのため、まともな基礎教育が受けられていないろうあ者が多数いる。読唇術前提で行われる高等教育の授業は「防音ガラスの檻に密閉された中で授業を受ける」に等しいため、余程の努力をしないとまともな教育は身につかない。そのため、筆談もまともにできないろうあ者も数多くいる。

・このように隔絶した文化環境の中に生きるろうあ者は、ろうあ者同士による「デフ・コミニュティ」の中に篭りがちであり、その中でろうあ者相手専門の恐喝などヤクザ稼業を営むろうあヤクザもいる。

・ろうあ者が殺人などで裁判にかけられると、日本語のやりとりに困難を伴う上に、倫理価値観が一般的な日本人と大きく異なるため、様々な混乱を招く。

・知的障害持ちの累犯者の中には小学生低学年レベルの知能しか持ち合わせていない人も多く、そういった人を大人向けの裁判にかけて断罪する事に何の意味があるのか。犯罪抑止にも更生にも何にも役立たない儀式でしかないのでは。

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と、大変重い話だらけだったのですが、大人用おむつや入浴設備、介護用具も満足に用意されていない環境下で認知症が進んだ重罪人を押し込めておく事に何の意味があるのかというのは大変難しい問いだと思います。医療刑務所相当の受け皿を拡充して入れるかなど色々やりようはあるかと思いますが、少なくとも一般の刑務所がやるべき話ではないと思います。

私としましては、「知的障害者と精神障害者には刑務所以外の隔離保護施設を用意」「身元引受人の居ない高齢受刑者については要介護状態になった時点で安楽死できる権利を受刑者に選択制で与える」辺りで何とか出来ないものかと思いますが、なかなか法改正を含め事態の改善の道のりは厳しいように感じます。

それにしても、頭脳明晰ながら排泄コントロールができなくなってしまった老人や、食い詰めヤクザに囲われている(見た目は健常者の)軽度知的障害者の女性の話は読んでいて心が痛みました。特にAV出演者に軽度知的障害者が数多く居るというのは何とも・・・ :cry:

考えてみると、これは「2○時間TV」のような「頑張っている障害者」をやたら持ち上げ、「障害者=可愛そうだけど努力している人たち」というステレオタイプな虚像を喧伝しまくったマスメディアが生み出した物凄く深い闇なのかもしれません。

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