【書評】「レッド1969~1972」 1巻 [山本直樹 著]

ここ二週間、連日書籍の電子化(自炊)と廃棄を繰り返して荷物を圧縮しているのですが、読みなおして面白かったものを紹介して行きたいと思います。

今回は「レッド1969~1972」の1巻を紹介させて頂きます。

本作は、連合赤軍の山岳ベース事件や浅間山荘事件を題材にした半ドキュメンタリー作品です。

私の世代からすると只のキ○ガイ達が「お上に逆らう俺ってナウでヤングでカッコイイ」的なノリで機動隊に向かって爆弾を投擲して吹っ飛ばしたり、銀行で包丁を突きつけ、ライフルをぶっ放して金を強奪して暴れ回るという、今の時代にはありえない濃密で真っ赤な狂気を感じさせてくれる団塊世代の青春を描いた作品です。

主人公たちは毛沢東思想に染まった「革命者連盟」と石原莞爾の最終戦争論の鬼子とも言える「赤色軍」に所属する団塊世代の量産型大学生やそのOBで、高度成長期に比較的裕福な家庭で育った若者です。アメリカのヒッピーやベトナム反戦運動、公民権運動やジェンダーフリーといった当時のナウな思想を取り入れつつも、別に徴兵されてベトナム送りにされるわけでもなく、食うや食わずで生きるためにゲリラ化するような状況でもない中、「革命ごっこ」に明け暮れる極左活動家の姿を濃厚かつ鮮明に描いた作品と言えるでしょう。

主人公たちは権力(警察)に追われながらも内輪で高邁な共産思想をこね回して内紛や権力闘争を繰り返すだけで、現実的な革命プランが有る訳でもなく、直接敵対関係にある権力(警察)に対して無計画な襲撃を行うだけ(それも殆ど失敗や返り討ちに遭って戦力を失うだけ)で追い詰められた挙句、味方同士での殺し合いや処刑、リンチを繰り広げる山岳ベース事件へと発展していきます。

とかくやっている事が「全身全霊をかけたキ○ガイ」としか言い様がない狂いっぷりが清々しく、「赤色バトルロワイヤル」とでもいうべき作風を醸し出しています。

1巻ではまだ学生運動のノリで、男女入り混じった共同生活を送りつつのんびりと飯を食ったりタバコを吸ったり、ズコバコしたりとまだまだ呑気なお祭り騒ぎに毛が生えた程度の活動家ライフが描かれています。

が、2巻以降は机上の空論であった共産思想という名の「狂気」が徐々に実体化していく過程で次々と犠牲者が増えていくという「リアル」を見せつけていくという展開に・・・

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と、面白い要素が山盛りのこの作品なのですが、専門用語が多くて難解な部分が多いので、私なりに解釈した用語を以下に解説してみました。

・「流賊主義」→略奪や目先の快楽を追い求める犯罪者集団的な思想(毛沢東選集より)

・「(極左)冒険主義」→客観的な情勢を無視して目的を実現しようとする急進主義や過激主義。元はトロツキズムの批判用語。

・「日和見主義」→ある定まった考えによるものではなく、形勢を見て有利なほうにつこうという考え方。

・「総花的(そうばなてき)」→要点を絞らずに各論を並べた物に発散してしまうこと

・「プチブル」→小ブルジョア、小市民。自作農、自営業、士業など労働者と資本家の中間層を指す。日和見主義とセットで自己批判によく使われる。

・「自己批判」→自らの誤りを分析することで、そこから得られる教訓を学び取る。そして二度と同じ過ちを繰り返さないことで、革命家としての自己を高め、ひいては自分が所属する党派が発展するという考え方。要はカルト集団の洗脳テクニック。文化大革命では多数の文化人などに首に糾弾プラカードをぶら下げさせ吊し上げ、自己批判を強要した挙句私刑にかけられた。

・「虐殺」→拳銃を奪うため交番を襲撃し、警官を鈍器で殴打した挙句拳銃で射殺されること。

・「反米愛国路線」→アメリカは大嫌いだけど中国は大好きだよ!真っ赤に染まった日本も大好きだよ!米帝の手先になってベトナム人民虐殺に手を貸す日本政府を武力で打倒だ!

・「世界革命」→共産ゲリラで世界中の反共政権を転覆し、世界を真っ赤なイデオロギー一色に染め上げるぞ!アラブや北朝鮮と手を組んでテロリズムで世界を破壊し尽くして真っ赤に再構築するのだ!

・「権力」→政府や警察や司法機関の事。言うなれば「お上」「アメポチ」「権力の犬」。彼らの機関誌の一番熱心な愛読者は公安警察である事は公然の秘密。

・「ゲバ棒」→ゲバルト棒の略。機動隊と殴りあうための安い建築用の木材。脆いのですぐ折れる。軽いのと権力に怪我を負わせにくいので初心者向けの武器である。言わば極左のハリセン。なおゲバルトはドイツ語で「暴力」の意味。

・「ブルジョワ裁判」→ブルジョワジーと階級闘争を繰り広げているつもりが、手段と目的が入れ替わってしまい、爆破・破壊・傷害行為に及んで逮捕された赤い人がかけられる裁判。開廷中には仲間からの「不当裁判」「異議なし!」という赤いヤジで応援されるが、裁判官の心証が悪くなる以外特に効果はない。

・「カンパ」→活動資金を寄付して貰うこと。極左活動家はまともな所に就職ができないため、コミケでは売っていない類の難解な薄い本を売ったり、シンパや親類縁者にタカるなどして生活費や活動費を稼ぐ。これらの資金はパイプ爆弾やロケット弾、沖縄で基地の金網に剃刀やガラス片を仕込んだり、オスプレイに向かって凧揚げをしていたキチガイジジババじーさんばーさんの旅費などに費やされる。最近ではFATF(金融活動作業部会)が日本に対して個人レベルでのテロ資金供与対策を求めるようになってきており、この手のカンパも口座開設拒否や凍結など厳しい規制にさらされる見込みである。

・「シンパ」→シンパとは、ある人物や団体の政治的思想に賛同し信奉者となった人のことをさす言葉。英語のシンパサイザー(Sympathizer)の略で、共鳴者、同情者の意味が、転じて、影響力のある人物、団体の信奉者、支持者、賛同者等々の類語と同じような意味でも使われる。作内では活動資金を供与してくれたり、逃走を手引してくれる民間の協力者という意味合いで使われている。

・「アジト」→活動拠点。シンパが貸してくれたり、偽名で借りた家やアパート。カンパと同様にFATF(金融活動作業部会)が不動産取引についても規制をかけるよう勧告しているため、遠からず反社会的な活動家はアパートも借りれなくなる見込みである。当時は規制が非常に緩かったため、四畳半のアパートを偽名で借りて5-6人でタコ部屋共同生活を行いながらガリ版刷りや爆弾づくりを行っていた。

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とかく「XX主義」「XX思想」「XX的」といった論理的な言葉を乱発するのが彼らの議論の特徴なのですが、その言葉に主体的な意味や意義が何もない辺り、公安警察に「人生の無駄使い」と揶揄された通りと言った所でしょうか。団塊世代活動家の描いていたユートピアとその残骸、共産主義という名の狂気に興味がわいた方は是非とも一読あれ。

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ちなみに、1巻の表紙に描かれているメンバーの全体写真的な図の番号ですが・・・

 

 

 

 

これはメンバーの死亡順序を示したものです。

【書評】「レッド1969~1972」 1巻 [山本直樹 著]” への4件のコメント

  1. インテリ気取りの脳を犯される、凶烈に感染力の強い疫病かぁ。1945年の大空襲と食糧難をかいくぐった大正世代には免疫があるけど、戦後生まれの世代に猛威をふるったのですね。

    • 彼らが「権力」に追い詰められて社会からの孤立や飢えによって狂暴化していく過程が二巻以降のストーリーで語られているので、
      その点もレビューしていこうかと思います。

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